「GTA6が待ちきれない」——25歳のAI起業家が、AIだけで“自作GTA6”を作り始めた
GTA6の発売を待ちきれず、自分で作り始めた人物がいる。25歳のAI起業家Ziwen Xuが、AIエージェント(主にClaude)を回す「vibe coding」で、GTA6風のオープンワールド犯罪ゲーム「GT-Caliber」を6月10日から開発している。掲げた目標は、本物のGTA6(11月19日発売)より先にリリースすること。無謀ではあるが、その開発過程が「AIの現在地」を映す公開実験として話題になっている。GTA6 FEEDが概要をまとめた。
本記事は2026年7月4日時点の情報にもとづく。
何をやっているのか
Ziwen Xuは、AIエージェントのスタートアップHyperecho(企業のAI活用を支援する)の創業者だ。6月10日、「GTA6を作り始めた。まだ打っていて実感が湧かない」という趣旨の投稿とともにプロジェクトを開始し、この開発のためにClaudeの上位プラン(Claude Max 20x)へ課金したと明かした。
https://x.com/ziwenxu_/status/2073147150201155804
開発手法は、AIエージェントをループのように連続稼働させ、コードの生成・テスト・修正を任せる「vibe coding」と呼ばれるやり方だ。ほぼ毎日Xで進捗を公開し、コードはGitHubで一般公開、AIが作業する様子をライブ配信することもある。あわせて、モデリング・作曲・レベルデザインなどができる人間の協力者も募集している。すべてをAIに丸投げしているわけではない。
きっかけは、AI投資家のMatt Shumerが投げかけた挑戦だった。Shumerは「モデルをループさせて、初期トレーラー以上の品質と規模を持つGTA6級のオープンワールドを作れないか」という趣旨の投稿をしており、Xuはこれを再投稿したうえで自ら着手した。目標について本人は「野心的で、たぶん愚か。それでもやる」と書いている。
進捗:9日ほどで「青い箱」から街へ
進み方は速く、そして混沌としている。
初日の映像は、青い箱のようなキャラクターが平面の上を跳ね回るだけのものだった。2日目には人型のキャラクターが街を走り、3日目にはNPCが歩き、車が道路を走り、射撃や、Instagram風のSNSが入ったスマートフォンまで登場した。7日目には道路のある一帯の街並みが現れ、本人が「初めてGTAらしく見えた」と語る段階に至った。現在は、運転、NPC、射撃、電話(マップ・連絡先・財布つき)、イントロ画面とオリジナルBGM、天候の変化などが実装されている。道路や歩道の細部は、AIだけでは詰め切れず手作業で調整しているという。
https://x.com/ziwenxu_/status/2073870048481997126
開発エンジンは当初、無料のGodotで始めたが、7日目にUnreal Engineへ移行した。この間、エンジン選定は二転三転したと報じられている。
つまずきと“事件”
面白がられているのは、完成度そのものより、その過程で起きるトラブルだ。
最も象徴的なのが、舞台の取り違えだ。GTA6のVice Cityのモデルはマイアミ(フロリダ)だが、AIエージェントはあるとき、ロサンゼルス風の高層ビル群を生成してしまった。この一件は各所で「AIは汎用的な箱(サンドボックス)なら速く作れるが、GTAをGTAたらしめている固有で意図的な、文化的に正確な世界までは作れない」ことの好例として引かれた。
コストの問題も生々しい。Xuは、Claudeの週間利用枠(20倍プラン)を1日で33%消費し、「時計が動き始めた」と書いている。AIを回し続ける開発は、利用枠との戦いでもある。なお、この進捗投稿が盛り上がったのは、ちょうどRockstarがGTA6の予約開始(6月25日)を発表した時期と重なったことも大きい。
評価:AIの「速さ」と「ビジョンの不在」
このプロジェクトをどう見るべきか。結論から言えば、数日でサンドボックスを立ち上げてしまう速さは、エージェント型のAI開発の到達点として素直に驚くべきものだ。一方で、本物のGTA6に匹敵する・先に出すという目標が現実に達成されるとは、ほとんどの観測者が見ていない。価値は「競合」ではなく「実験」にある、というのが妥当な評価だ。
鍵になるのが、先のロサンゼルス取り違えだ。AIは機能や見た目の断片を高速で量産できるが、「何を作るのか」という創造的なビジョン——どの街を、どんなラジオ局を、どんなジョークやキャラクターを置くか——は、依然として人間の領域にある。速い、しかしビジョンがない。これが多くのメディアの共通した見立てだ。
皮肉なことに、この実験はTake-TwoのZelnick CEOの主張を裏づける材料とも受け取られている。Zelnickは、AIは開発の道具としては有用でも、GTAのような10億ドル規模の大作を生み出す創造的ビジョンは持たない、と繰り返し述べてきた。Rockstar自身、GTA6の開発ではAIの活用を避けたと報じられている。11月19日に、13年をかけて手作業で作り込まれたGTA6が出れば、その対比はかえって際立つことになる。
反応も割れている。
- 「数日でここまで動くのか。AIの可能性を感じる」
- 「本気すぎて逆に応援したくなる」
- 「面白いけど、まだGTA6には程遠い」
- 「結局はバズ狙いのエンゲージメント目的では」
なお、GTAに似せた作品は、素材を直接流用していなくても、トーンや街の型といったトレードドレスの面で、将来的に権利者の視線を集めやすいという指摘もある。この点は、AI時代のファン制作物が今後直面しうる論点でもある。
まとめ
- 何をしているか:25歳のAI起業家Ziwen Xuが、AI(主にClaude)を回してGTA6風ゲーム「GT-Caliber」を制作。目標は本物より先に出すことだが、GTA6に匹敵するとの見方は大勢ではない。
- なぜ注目されるか:AIエージェント開発の「速さ」と「創造的ビジョンの不在」を、毎日の公開更新としてリアルタイムに見せているから。
このプロジェクトは、Rockstarと無関係の個人によるファン制作の実験である。GTA6そのものの情報ではないが、発売を待つ間に「AIはどこまでゲームを作れるのか」を考えさせる、いまならではの話題だと言える。
免責事項
本記事は、Ziwen Xu 本人のX(旧Twitter)投稿および海外メディアの報道をもとに、GTA6 FEEDが内容を整理してまとめたものである。「GT-Caliber」は Rockstar Games・Take-Two Interactive とは一切関係のない、個人によるファン制作プロジェクトであり、GTA6 の公式な開発・発表とは無関係である。開発状況や実装内容、目標は2026年7月4日時点の情報にもとづき、今後変わりうる。最新の状況は本人のX等の一次情報を確認されたい。

