まだ発売前なのに、GTA6はもう現実世界を動かしている

『Grand Theft Auto VI(GTA6)』は、まだ発売されていない。それなのに今、ゲームの外側ではすでに奇妙なことが起き始めている。

舞台のモデルとなったマイアミでは、GTA6のために通常の広告規制を緩和し、街の中心部を巨大広告で彩る計画が持ち上がっている。新映像が公開されれば数百万人が同時に配信を見つめ、そこで流れた何十年も前の楽曲には突然、世界中から再生が殺到する。

GTA6がどれだけ売れるのか。その答えが出るのは発売後だ。しかし、「GTA6という作品がどれほど大きな存在になっているのか」については、すでに現実世界の数字が答えを出し始めている。


現実のマイアミが「Vice City」になろうとしている

GTA6の舞台となるLeonida州、そしてVice Cityが、現実のフロリダやマイアミをモデルとしていることは改めて説明するまでもないだろう。ところが発売を前にして、その関係が逆転し始めている。「マイアミを参考にVice Cityを作る」のではなく、現実のマイアミ側がGTA6を利用して街を盛り上げようとしているのだ。

マイアミのローカルメディアThe Miamianは9月4日、Miami District 2 CommissionerのDamian Pardo氏が、GTA6の発売に合わせた大型広告をDowntown Miamiに掲出できるようにする条例案を提出したと報じた。計画では通常の広告規制を一時的に緩和し、GTA6の大型バナーや建物を覆うラッピング広告などを設置できるようにする。期間は10月15日から12月31日までで、最大6枚。報道によれば、Rockstar GamesまたはTake-Two側が1枚につき20万2,000ドルを支払い、6枚すべてが使用された場合は約121万2,000ドル規模になる。この条例案は9月10日にMiami City Commissionで審議される予定だ。

もちろん、まだ「マイアミ中心部がGTA6広告で埋め尽くされる」と決まったわけではない。それでも、ひとつのゲームの発売に合わせて都市側が広告規制を動かす案まで出ていること自体が異例だ。しかもマイアミ周辺では、これとは別にMiami-Dade Countyの空港や公共施設を利用したGTA6プロモーション案も話題になっている。

かつてRockstarが現実のマイアミを見てVice Cityを作った。そして2026年、そのVice Cityを宣伝するために、今度は現実のマイアミが動き始めている。この逆転現象は、GTA6という作品を象徴する出来事なのかもしれない。


新映像を見るために約397万人が同時に集まった

GTA6が動かしているのは街だけではない。8月27日に公開された「Grand Theft Auto VI: An Extended Look」は、ゲーム配信の世界でも巨大なイベントになった。

Streams Chartsのデータを引用した報道によれば、Twitch、YouTube、KickでExtended Lookを扱った配信やリアクションのピーク同時視聴者数は約397万人。9,000以上の配信者がこの映像を取り上げ、合計視聴時間は約520万時間に達したとされている。

ここで注意したいのは、397万人という数字がNetflix公式配信そのものの視聴者数ではないことだ。Twitch、YouTube、KickでExtended Lookを扱った配信を合算した数字で、総視聴時間の割合はTwitchが約44%、YouTubeが34.8%、Kickが20.2%だったと報告されている。それでも約397万人が同じタイミングでGTA6関連コンテンツを見ていたという規模は大きい。

そして面白いのは、Rockstar自身の配信だけではなく、「GTA6を見る人を見る」という巨大な二次市場まで形成されていることだ。映像が公開されれば、世界中のストリーマーやYouTuberが一斉に反応する。そのリアクションを見るために、さらに数百万人が集まる。GTA6はゲームとして発売される前から、すでに巨大な配信コンテンツになっている。


Rockstarが一曲流すだけで、Spotifyの数字が跳ね上がる

さらに分かりやすいのが音楽だ。Extended Lookで使用された楽曲は、映像公開後にSpotifyで大きく再生数を伸ばしたと報じられている。

なかでもCaptain & Tennilleの「But I Think It's A Dream」は、Extended Look公開後のグローバル再生数が130,730%増加。プレイリストへの追加数については、実に885,400%増という数字が報告された。ほかにも「Se Me Nota (Agárrame)」が10,190%、「Off The Grid」が5,720%増加し、Cliff Richardの「Devil Woman」など複数の楽曲に大きな変化が確認されている。

Rockstarが新曲をヒットさせたわけではない。もともと存在していた楽曲を、GTA6の映像で使った。それだけで世界中の人が曲を探し、Spotifyを開き、プレイリストへ追加している。

これはRockstar作品では決して初めて見る現象ではない。GTAシリーズはラジオ局を通じて膨大な音楽をプレイヤーへ届けてきたし、過去作品をきっかけに楽曲を知ったというプレイヤーも少なくない。ただ、GTA6ではその影響がゲーム発売前から発生している。まだプレイヤーはVice Cityの車に乗ってラジオを聴くことすらできない。それでも、Rockstarが選んだ音楽が現実のストリーミング市場を動かしている。


「何本売れるか」だけではGTA6の大きさを測れなくなってきた

GTA6について語られる数字といえば、これまでは予約数や開発費、初週売上、GTA5との比較などが中心だった。もちろん発売されれば、それらは大きなニュースになるだろう。しかし現在起きていることを見ると、GTA6の規模をゲームの販売本数だけで測るのは難しくなっている。

現実のマイアミではGTA6を利用した巨大広告計画が進み、映像を公開すれば数百万人規模のライブ視聴が発生し、そこで選ばれた音楽には世界中からアクセスが集中する。ひとつひとつを見れば「広告」「配信」「Spotify」という別々のニュースだ。だが、並べてみると共通していることがある。

RockstarがGTA6について何かを動かすと、その周囲にある現実世界まで動く。

しかも、まだゲームは発売されていない。


GTA6発売日は「ゲーム業界だけのイベント」ではなくなるかもしれない

そして、この状況で気になるのが発売日だ。今起きている現象は、すべて発売前の段階で発生している。映像一本で数百万人が集まり、使用曲の再生数が跳ね上がるのであれば、実際にGTA6が発売されたときには何が起きるのか。

世界中の配信者が一斉にVice Cityへ入り、SNSにはゲーム内の出来事が流れ続け、現実のマイアミではGTA6の広告が街を覆っている――そんな光景も、もはや大げさな想像とは言えなくなってきた。

GTA5が発売された2013年から、長い時間が経った。その間にYouTube、Twitch、TikTok、Spotifyをはじめ、ゲームを取り巻く環境そのものも大きく変わった。GTA6は、その環境で初めて発売される完全新作のGrand Theft Autoだ。だからこそ今回の発売は、単に「世界で最も期待されているゲームのひとつが発売される日」では終わらない可能性がある。

現実の都市が動く。配信市場が動く。音楽市場が動く。

GTA6はまだ発売されていない。それでも、すでに現実世界は動き始めている。

発売日、その影響がどこまで広がるのか。今起きていることは、その予告編なのかもしれない。


出典

Miami wants to get in on the "Vice City" action(The Miamian)

Grand Theft Auto VI 公式サイト(Rockstar Games)


注記: 本記事は、The Miamianの報道、Streams Chartsのデータを引用した各報道、およびSpotifyの再生数変化を伝える報道をもとにGTA6 FEEDが整理したものであり、Rockstar Games/Take-Two Interactive/City of Miamiとは一切関係がない。Downtown Miamiの広告条例案は本記事執筆時点で審議前であり、可決・実施が決まったものではない。同時視聴者数・再生数の増加率は各データ提供元が発表した数値で、集計範囲や基準はそれぞれ異なる。掲載画像はRockstar Gamesが公開した公式スクリーンショットであり、本記事で扱っている広告計画や配信・音楽の数字を写したものではない。