なぜGTA6を「LOVE Magazine」で特集したのか――ジェイソンとルシアから見えるRockstarの狙い
GTA6の新情報が、ここ数日で一気に増えている。9月29日にはGame Informerが14ページにわたる大型特集を公開し、天候や野生動物、Leonidaの作り込みなど、実際にゲームを遊ぶうえで気になる新情報が明らかになった(GTA6新情報に世界中のファンが殺到|Game Informer特集公開でサイト・アプリが接続困難に)。そして、その直後に登場したのが『LOVE Magazine Issue 27』だ。
LOVE Magazineでも新しいジェイソンとルシアのアートワークやスクリーンショットが公開され、Rockstar Gamesの開発者がGTA6について語っている。ただし、Game InformerとLOVE Magazineを読み比べてみると、同じGTA6特集でも見せようとしているものはかなり違う。Game Informerが見せたのは「GTA6というゲーム」だったのに対し、LOVE Magazineが見せようとしているのは「ジェイソンとルシアという二人」だ。
ゲーム専門誌ではないLOVE Magazineで、なぜRockstarはこの二人の性格や関係性をここまで詳しく語ったのか。そこには、GTA6をこれまで以上に幅広い層へ届けようとするRockstarのマーケティング戦略も見えてくる。
🌴 Game Informerとは、そもそも見せているGTA6が違う
Game Informerの特集で注目されたのは、Leonidaで発生する局地的な雨やハリケーン、野生動物、サイドアクティビティなど、実際にGTA6をプレイするときに体験する世界の進化だった。「GTA6のオープンワールドはどこまで進化したのか」「前作から何が変わったのか」という、発売を待つゲームファンが知りたい部分へ真正面から答える内容だったと言っていい。
一方、LOVE Magazineが掘り下げているものはまったく違う。前面に出てきたのはルシアとジェイソンの性格、二人が抱える弱さや欠点、互いにどう影響し合うのか、そして彼らが何を求めて犯罪と逃亡の道へ進んでいくのかという「人間の物語」だ。
これは単に二つの媒体が偶然違う話題を扱ったというだけではなく、Rockstarがそれぞれの媒体に合わせて、GTA6の異なる魅力を見せているようにも見える。
❤️ 正反対のルシアとジェイソン、だからこそ互いを必要とする
LOVE Magazine公式が公開した内容では、ルシアは「より良い人生」を望み、それを手に入れるためなら何ものにも邪魔させない人物として紹介されている。自分が欲しい人生へ向かって、自ら前へ進もうとする女性だ。
ところがジェイソンは、そのルシアとは対照的な人物として描かれている。彼は自分の意思で人生を切り開いてきたというより、置かれた状況によって人生の決断をさせられてきた男だという。
この説明だけなら「性格が正反対の主人公二人」で終わる。しかし、RockstarのゲームライターElizabeth Gauvey-Kernの発言まで合わせて読むと、二人の関係はもう少し深い。Rockstarはジェイソンとルシアを、傷つきやすさと強さの両方を持ち、欠点もあり、正しいときも間違うときもある人物として作った。そして重要なのが、二人は「互いから学ぶことができる」ように設計されているという点だ。
自分から人生を変えようとするルシアと、状況に人生を動かされてきたジェイソン。二人は正反対だからこそ、自分にはないものを相手が持っている。
Rockstarが「互いの足りない部分を補う恋人同士」と直接説明しているわけではない。しかし、二人の人物設定と「互いから学ぶ」という開発者の言葉を重ねれば、それぞれが欠けた部分を持ち、その違いによって互いを必要とする関係として描こうとしていると読むことはできる。
LOVE Magazineが見せているのは、ただ一緒に犯罪をする男女ではない。二人とも完璧ではないからこそ相手から影響を受け、関係そのものが変化していく。その「お互いを必要とする愛」が、GTA6の物語を動かす大きな軸になる可能性がある。
🏠 ルシアが求める「より良い人生」と、現代のアメリカンドリーム
さらに興味深いのが、RockstarのSenior Vice President of Narrative、Rupert Humphriesが語った「アメリカンドリーム」についての話だ。
Humphriesは、現代のアメリカンドリームは以前よりも慎ましいものになったのかもしれないと語っている。途方もない成功を収めることではなく、家族のための家を持ち、ローンを払い終えること。そんな普通の安定した生活そのものが「夢」になりつつあり、マイアミと南フロリダはその戦いにおける特別な「最前線」だという。
この発言を、ルシアの「より良い人生が欲しい」という設定と切り離して考えるのは難しい。
GTAシリーズといえば、犯罪によって巨額の金を手に入れ、成功を目指す物語を描いてきた。しかしGTA6では、そもそも二人が求めている「成功」の意味自体が変わっている可能性がある。金持ちになりたいから犯罪をするという単純な話ではなく、普通の幸せを手に入れたいのに、その「普通」すら簡単には手に入らない世界で、ジェイソンとルシアが別の道へ進んでいく。そう考えると、二人の犯罪逃避行と現代のアメリカンドリームというテーマが一本につながってくる。
🔫 「ボニー&クライド型」でも、二人は完璧な犯罪者ではない
LOVE Magazineは今回のGTA6について「Bonnie and Clyde-style narrative」という表現を使っている。男女二人による犯罪逃避行という構図自体は以前からファンの間でも語られてきたが、今回の特集でRockstarが強調しているのは、犯罪の派手さよりも二人の不完全さだ。
ゲームライターAlexa D'Agostinoは、自分自身の欲求を持つ一人の人間としてキャラクターを書いていけば「perfectly imperfect(完璧に不完全)」な存在になると説明している。
つまりジェイソンとルシアは、何でも完璧にこなす犯罪映画のヒーローではない。間違った判断もするし、傷つくこともある。意見が食い違うこともあれば、相手から何かを学ぶこともある。だからこそGTA6では、次にどんな犯罪をするのかだけではなく、犯罪と逃亡を重ねるなかで二人の関係がどう変化していくのかそのものが、ストーリーを先へ進めたくなる理由になるのかもしれない。
👗 なぜRockstarは「LOVE Magazine」を選んだのか
そして今回、特に注目したいのが媒体そのものだ。LOVE Magazineはゲーム専門メディアではなく、ファッションやカルチャー、人物表現などを扱ってきた媒体だ。そこでRockstarが前面に出したのは、天候システムでも銃撃戦でも車でもなく、ルシアとジェイソンという二人の人間だった。
新しい表紙アートでは二人が密着した姿が描かれ、記事では性格の違い、弱さや欠点、互いから学んでいく関係について開発者が語る。Game Informerで見せたGTA6とは明らかに入口が違う。
Game Informerでは、ゲームに強い関心を持つ読者に向けてオープンワールドやシステムの進化を見せる。一方LOVE Magazineでは、ファッションやカルチャー、人物や物語に興味を持つ読者にも届く形で、ジェイソンとルシアの魅力を見せる。
もちろん、Rockstarが「媒体ごとにこのターゲットを狙った」と説明しているわけではない。そのため断定はできないが、媒体によってGTA6の見せ方を意図的に変えているように見えるのは非常に興味深い。
👩 GTA6は「これまでGTAを遊ばなかった人」も取り込もうとしている?
ここからは考察になるが、今回のLOVE Magazine展開を見ていると、GTA6はシリーズの既存ファンだけを見て作られている作品ではないのではないかと思えてくる。その象徴がルシアだ。
Rockstarは彼女を単に「シリーズ初の本格的な女性プレイアブル主人公」として売り出しているわけではない。彼女が何を望んでいるのか、なぜジェイソンとは正反対なのか、二人がお互いから何を学ぶのかまで丁寧に見せ始めている。
さらに、これまで公開された映像やスクリーンショットでは、服装や髪型を含め、キャラクターをどう見せるかという部分にもかなり力が入っていることがうかがえる。そこへ今回のLOVE Magazineという媒体選びまで重ねれば、RockstarがGTA6を女性を含め、これまでGTAに強い関心を持っていなかった層にも届く作品にしようとしている可能性は考えられる。
GTA6を「犯罪ゲームだから遊ぶ」だけではなく、「ルシアが気になる」「この二人の関係の続きを見たい」「この世界で自分のキャラクターを作って生活してみたい」という別の入口から入ってくる人がいてもいい。むしろRockstarは、そうした入口を意識的に増やしているのかもしれない。
💡 Game Informerは「世界」を、LOVE Magazineは「二人」を見せた
Game InformerとLOVE Magazineは、どちらも発売直前に公開されたGTA6の大型特集だ。しかし二つを並べてみると、それぞれがまったく違う役割を持っているように見える。
Game Informerでは、天候や野生動物をはじめとするLeonidaの作り込みを通じて、「この世界で何が起きるのか」を見せた。一方LOVE Magazineでは、ルシアとジェイソンの性格や弱さ、互いから学ぶ関係を通じて、「この世界を誰と生きるのか」を見せ始めている。
自分から未来を掴もうとするルシアと、状況に人生を動かされてきたジェイソン。正反対で、どちらも完璧ではないからこそ、お互いが持っていないものを相手が持っている。その二人が「より良い人生」を求めて犯罪へ進み、逃亡の中で互いに影響を与えながら変わっていく。
GTA6の魅力は、シリーズ最大級のオープンワールドや進化したゲームシステムだけではないのかもしれない。プレイヤーがジェイソンとルシアを好きになり、この二人の行く末を最後まで見届けたくなること。LOVE MagazineでRockstarが見せ始めたのは、GTA6のもう一つの大きな武器なのではないだろうか。
出典
注記: 本記事は、『LOVE Magazine Issue 27』およびLOVE Magazine公式が公開したGTA6特集の内容と、Game Informerの特集をもとにGTA6 FEEDが整理・考察したものであり、LOVE Magazine/Rockstar Games/Take-Two Interactiveとは一切関係がありません。開発者の発言は公開された内容を日本語で要約したもので、原文のニュアンスと完全には一致しない場合があります。媒体選びの意図やターゲット層に関する記述は、Rockstarが公式に説明したものではなく編集部の考察です。掲載画像はLOVE Magazine/Rockstar Gamesが公開した表紙アート・写真・引用カードで、アイキャッチは公式画像3点を並べて編集部が構成したものです。

