FiveMは、Grand Theft Auto V(GTA5)を独自のマルチプレイヤー環境へと拡張するMODフレームワークである。今日ではGTARP(ロールプレイ)文化の中心的な基盤として知られるが、ここに至るまでの道のりは平坦ではなかった。
一個人のコミュニティプロジェクトとして始まり、Rockstar/Take-TwoからBANや法的圧力を受け、匿名的な形で復活し、最終的にはRockstar Gamesの傘下に入る——という、ゲームMOD史でも珍しい経緯をたどっている。
この記事では、FiveMが2014年に産声を上げてから2026年現在に至るまでの歴史を、年表形式で整理する。あわせて、海外ブログやまとめ記事で繰り返し拡散されている年代の誤りについても、公式発表・主要メディア報道・コミュニティ記録を区別しながら確認していく。

早わかり年表
| 年 | 主な出来事 |
|---|---|
| 2014年 | CitizenMP/FiveRebornの系譜が始動(リード開発者NTAuthority) |
| 2015年 | GTA5のPC版発売。夏に中心人物のアカウントがBAN、同年に私立探偵の接触とC&D、配布停止 |
| 2016年 | FiveMへの改名、CitizenFX Collective(CFX)体制の確立、NTAuthorityの匿名復帰 |
| 2017年 | OpenIV事件(FiveMとは別件のMODツールへのC&D)とコミュニティの大規模反発 |
| 2019年 | RedM(RDR2版)の提供開始 |
| 2021年 | 同時接続25万人に到達、GTA RPブーム |
| 2023年8月 | RockstarがCfx.reを買収(額非公表)=Rockstar傘下入り |
| 2026年 | Cfx Marketplace始動(1月)、alt:V終了(2月)、RAGE:MP終了発表(5月) |

前史:2014年 ―― CitizenMP/FiveRebornの始動
FiveMの源流は、GTA5がPC向けに発売される前の2014年にさかのぼる。リード開発者として知られる「NTAuthority」が、CitizenMPと呼ばれるフレームワークを公開したのが出発点だった。GTA5のPC版が発売されたのは2015年4月だが、それ以前から有志のモッダーたちはコンソール版を相手に試行錯誤を続けており、PC版の登場が本格的なマルチプレイヤー実験への扉を開くことになる。
当時のGTA Onlineは、Rockstarが完全に管理する閉じた環境であり、独自のゲームモードを動かしたり、サーバーの挙動を改変したり、後にロールプレイ文化が求めることになる「持続する世界」を構築したりする余地はなかった。その空白を埋めようとした最初の本格的な試みが、CitizenMPの系譜から生まれたFiveReborn(ファイブリボーン)である。コミュニティがホストするサーバーへ接続し、改変されたGTA5を遊べるカスタムクライアントであり、同期は不安定でツールも限られていたが、構想を証明するには十分な完成度を持っていた。

2015年 ―― Take-Two/RockstarによるBANと法的圧力
プロジェクトが注目を集めるにつれ、これを歓迎しない当事者が現れる。GTA5の権利を持つTake-Two InteractiveとRockstar Gamesである。当時、FiveMはGTA Onlineとは別の形で、コミュニティ主導のマルチプレイヤー環境を作ろうとしていた。両社は、収益化されないコミュニティ主導のマルチプレイヤーを、GTA Onlineに対する競合と見なしたとされる。
海外コミュニティの記録や当時の報道によれば、2015年夏、Rockstar/Take-TwoはFiveMの中心人物らのアカウントをBANした。リード開発者のNTAuthority、サポートを担っていたqaisjp、TheDeadlyDutchiらが対象とされ、その名目は「海賊行為(ピラシー)を助長する」というものだったとされる。
さらに同年、Take-Two側の私立探偵がNTAuthorityに接触し、配布停止を求める警告状(C&D)を手渡したと伝えられている。これを受け、NTAuthorityはクライアント本体の公開配布を停止した。ただし、プロジェクトを完全に放棄したわけではなく、FiveMの土台であるオープンソースのフレームワーク「CitizenFX」の開発や、コミュニティ側の試み自体が完全に途絶えたわけではなかった。
なお、後年にPC Gamerなど海外メディアが振り返ったところによれば、このときRockstar側はFiveMを「海賊行為を助長するコードを含む、非公認の代替マルチプレイヤーサービス」と位置づけていた。皮肉にも、この評価は後の買収によって正反対へと転じることになる。
2016年 ―― FiveMへの改名と匿名復帰
開発者本人が表舞台から退いた後も、FiveMを存続させたいと考えるコミュニティメンバーは残っていた。FiveRebornやMultiFiveといった復活プロジェクトが立ち上がり、人々がこの試みを諦めていないことを示した。海外コミュニティの記録によれば、こうした動きに後押しされる形で、2016年末までにNTAuthorityはプロジェクトへの復帰を決断する。
復帰は匿名(インコグニート)で行われ、最も原型に近かったFiveRebornと合流する形で進められた。この過程でプロジェクトは「FiveM」へと改名され、開発体制としてCitizenFX Collective(CFX)が整えられていく。匿名性を保つための仕組みも導入され、特定の個人に法的責任が集中しない構造が志向された。FiveMという名称と、現在まで続くCfx.reの体制は、この時期に骨格が形づくられている。

ただし、この2015〜2016年の初期経緯は、公式の一次情報というよりも、開発者・コミュニティ側の証言や当時の記録に依存する部分が大きい点には留意が必要である。
2017年のモッディング論争(OpenIV事件)――FiveMとの関係を正しく整理する
ここで、海外ブログやまとめ記事で頻繁に混同されている事実を整理しておきたい。GTA6 FEEDが一次報道をたどって確認したところ、「2017年にTake-TwoがFiveMへC&Dを発行した」とする記述は、別件である2017年6月のOpenIV事件との取り違えである可能性が高い。
OpenIVは、GTA5・GTA4・Max Payne 3などのシングルプレイヤー向けMODを支える、約10年の歴史を持つツールである。海外メディアの報道によれば、2017年6月5日、Take-TwoはこのOpenIVに対してC&Dを送付した。これに対しコミュニティは猛反発し、Steamでのレビュー荒らしや7万7千を超える署名運動が起きる。その結果、6月23日にTake-Two/Rockstarは、シングルプレイヤーかつ非商用で、第三者のIPを尊重するMODプロジェクトに対しては「概して法的措置を取らない」とする声明を発表した。これは、後年のモッディング容認姿勢につながる重要な転換点だった。
重要なのは、この2017年の一件がFiveMではなくOpenIVを対象としていた点である。FiveM固有の法的圧力は前述の2015年であり、両者は年も対象も異なる。FiveMが存続できた根拠としてしばしば挙げられる「著作権で保護されたゲームファイルを配布せず、正規のGTA5コピーの所有を必須とし、サーバーはプレイヤー自身のハードウェア上で動く」という設計は事実だが、これはFiveMの恒常的な法的立場を説明するものであって、2017年に独立した対FiveM訴訟があったことを意味しない。そのため、買収年を2022年とする年表や、2017年のOpenIV事件をFiveMへの措置として扱う記事は、参照時に注意が必要だ。
2019年 ―― RedMの登場
FiveMの技術基盤は、GTA5以外のRockstar作品にも応用される。Cfx.re公式の告知によれば、2019年10月、Red Dead Redemption 2(RDR2)向けのマルチプレイヤーMODとして「RedM」が発表された。RDR2のPC版が2019年11月5日に発売されたのを受け、その約1ヶ月後、すなわち2019年末ごろから提供が始まっている。
RedMはFiveMと同じCfx.reフレームワーク上に構築されており、西部劇世界でのロールプレイサーバーを可能にした。GTA5とRDR2という二本柱を抱えたことで、Cfx.reはRockstar作品のコミュニティ・マルチプレイヤーを横断的に支える存在となっていく。
2021年 ―― 同接25万人とGTA RPブーム
2020年前後のコロナ禍を背景に、GTA5のロールプレイ(GTARP)はTwitchを中心に爆発的な人気を獲得する。人気サーバーNoPixelの3.0アップデートを契機に、xQc、Summit1G、SodaPoppinといった大型配信者が次々とRPに参入し、シーン全体の露出が一気に高まった。
海外メディアの報道によれば、2021年、Cfx.re/FiveMは週末のピークで同時接続25万人に到達したことを発表した。同時期のSteam上のGTA5(GTA Online含む)の同接を上回る数字であり、本体のオンラインモードよりもMODであるFiveMの方が活発という逆転現象が話題となった。GTARPが生み出す物語性の高さが、視聴コンテンツとしての魅力を支えていた。

2023年8月 ―― Rockstar傘下入り=事実上の公式化
そして2023年8月11日、歴史的な転換が訪れる。Rockstar Gamesは、FiveMとRedMを手がけるCfx.reチームの買収を発表した。買収額は非公表である。

海外メディアおよびCrunchbaseの記録によれば、この買収は「完了済み・子会社化」として処理されており、Rockstarは公式サイト上で、Cfx.reがFiveMとRedMのチームであり、正式にRockstar Gamesの一員になったと述べた。あわせて、ロールプレイ・クリエイティブコミュニティが制作するMODを公式に許容する方向へ、自社のMODポリシーを拡張したことも示された。かつてFiveMの開発者をBANし、法的圧力をかけた側が、その同じプロジェクトを傘下に収めるという構図であり、報道の一部でも「かつて自らBANしたモッディングチームを買収した」と表現されている。
ここで言葉を正確にしておくと、2023年8月に起きたのは、あくまでCfx.reチームがRockstar Gamesの一員になった、すなわち傘下入りである。これによってFiveMは法的なグレーゾーンから公式の後ろ盾を持つ立場へと変わったが、後述するように、FiveMが「唯一の公認プラットフォーム」として明確に位置づけられるのは2026年のことである。なお、買収主体はRockstar Games名義であり、買収年は2023年8月である。「2022年」あるいは「Take-Two名義」とする記述は誤りである。
フレームワークの進化 ―― ESXからQBCore、そしてQBOXへ
FiveMの歴史は、クライアント本体だけでなく、サーバー運営を支える「フレームワーク」の進化の歴史でもある。フレームワークとは、職業・経済・所持品・身分証といったロールプレイの基盤機能をまとめて提供する土台であり、サーバー製作者はこれを下敷きに独自の街を構築する。
初期に広く普及したのはESXである。その後、より整理された構造を持つQBCoreが台頭し、多くの日本語サーバーを含む新規サーバーで採用が進んだ。さらに近年は、QBCoreの系譜を引き継ぎつつ保守性を高めたQBOXが登場し、選択肢が広がっている。どのフレームワークを採用するかは、サーバーの設計思想や開発体制によって分かれており、現在も併存しながら発展を続けている。
現在(2026年)――他プラットフォーム終了とFiveM一本化
2023年の傘下入り以降、FiveMの立場はさらに強固になっている。2026年1月には、FiveM/RedM向けの公式ストアフロントであるCfx Marketplaceが始動し、ロールプレイサーバーを取り巻くクリエイター経済が制度化された。
一方で、競合だったマルチプレイヤーMODプラットフォームは相次いで姿を消している。海外メディアの報道によれば、alt:Vは2026年2月にシャットダウンを開始し、RAGE:MP(RageMP)は2026年5月25日に終了を発表、8月31日に完全終了する予定とされる。RageMP側の声明では、Rockstar/Take-Twoが、同社のプラットフォームライセンス契約(PLA)のもとでFiveMをGTA5マルチプレイヤーMODの唯一の公認プラットフォームと位置づけたことが、終了の直接的な理由として挙げられている。結果として、GTA5のマルチプレイヤーMODは事実上FiveMへの一本化が進んでいる。2023年が「傘下入り」だったとすれば、この公認プラットフォーム化がはっきりと表面化したのが2026年だと整理できる。
プレイヤー数の面でも勢いは衰えていない。2026年初頭以降、FiveMはSteam経由での起動分についてもSteamDB上で同時接続が追跡されるようになり、SteamDBによれば2026年4月12日に約21万5千人の最高記録を計上している。計測方法によって数値には幅があるものの、2026年現在も日常的に10万人を超える同時接続を維持しており、GTA5マルチプレイヤー文化の中核であり続けている。なお、FiveMはSteam上で単体販売されているわけではなく、利用には正規のGTA5が引き続き必要である。

技術的な前提として、2026年6月時点では、FiveMが対応するのはGTA5のLegacy Editionのみであり、Enhanced版には対応していない点に注意が必要である。
確定情報・主要メディア報道・コミュニティ記録の区別
本記事は、Rockstar/Cfx.re公式発表、当時の主要メディア報道、Cfx.reフォーラムなどの公開記録をもとに整理している。ただし、2015〜2016年の初期経緯には、開発者・コミュニティ側の証言に依存する部分もある点を、あらかじめ断っておく。
そのうえで、確度の高い確定情報として扱えるのは、2017年6月のOpenIV事件(FiveMとは別件)、2019年のRedM提供開始、2021年の同接25万人到達、2023年8月11日のRockstarによるCfx.re買収(額非公表)、2026年のCfx Marketplace始動およびalt:V/RAGE:MP終了である。これらは複数の独立した情報源で裏付けられている。2015年のBANと法的圧力、2016年のFiveMへの改名と匿名復帰については、事実関係そのものは広く伝えられているものの、上記のとおりコミュニティ記録に依存する部分がある。
一方、巷で流布する「2022年買収説」「Take-Two名義での買収」「2017年にFiveMがC&Dを受けた」といった記述は、確定情報と矛盾する誤りであり、本記事はこれらを採用しない。
考察に属するのは、GTA6(2026年11月19日発売予定、PS5/Xbox Series X|S)におけるロールプレイ対応の具体的な形である。買収によってCfx.reがRockstar傘下にある以上、何らかの公式なクリエイター/UGC機能が用意される可能性は高いと海外でも見られているが、その仕様や、FiveMに相当する仕組みが新世代でどう提供されるかは、現時点で公式発表がない。GTA6のPC版時期や、新MODプラットフォーム「ROME」と称される未確認情報についても同様で、いずれも確定した事実ではない。
免責事項
本記事はGTA6 FEEDが各種公開情報をもとに調査・整理した解説記事であり、Rockstar GamesおよびTake-Two Interactiveとは一切関係がない。記載内容には、発表済みの確定情報のほか、海外メディア報道やコミュニティ記録、未確認情報に基づく記述が含まれる。プレイヤー数などの数値は計測方法や時点によって変動する。最新かつ正確な情報については、Cfx.reおよびRockstar Gamesの公式発表を確認されたい。また、「実際にプレイした」と称する虚偽記事や、非公式の偽予約サイトには十分注意してほしい。
